訳者・安川晴基(名古屋大学准教授)氏選

ヤン・アスマン『エジプト人モーセ』刊行記念フェア

「記憶史」のまなざしで「西洋」を問い直す
西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書! “事実史”から“記憶史”へ!
ヤン・アスマン『エジプト人モーセ』の刊行を記念して、訳者・安川晴基(名古屋大学准教授)氏による選定タイトルをご案内します。

【2017年3月10日更新】

※一部品切れのタイトルも含まれております。ご了承ください。
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エジプト人モーセ  :  ある記憶痕跡の解読 

 

ヤン・アスマン/安川晴基

2017/01  藤原書店

定価:¥6,912(本体 ¥6,400)


西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書! “ヘブライ人モーセ”は、唯一の真なる神を崇め、他の神々を偽として排撃する、新たな一神教を告げ知らせた。この聖書の伝承に対し、モーセを“エジプト人”とする――邪とされたエジプトに、ある真理の故郷を求める――試みが、西洋の精神史にはあった。



●フロイトのモーセ論に対する応答

モーセと一神教   (ちくま学芸文庫 ) 

ジークムント・フロイト/渡辺哲夫

2003/09  筑摩書房

定価:¥1,296(本体 ¥1,200)

Kinoppy


◆選者による紹介コメント◆
「ユダヤ性」の由来の解明を試みたフロイト最晩年の書。ユダヤ一神教の起源に、「エジプト人モーセ」の殺害という、民族の抑圧されたトラウマ的出来事を読み解く。J・アスマン『エジプト人モーセ』もまた本書に対する応答。


神なきユダヤ人  :  フロイト・無神論・精神分析の誕生   

ピーター・ゲー/入江良平

1992/12  みすず書房

定価:¥2,592(本体 ¥2,400)


◆選者による紹介コメント◆
「啓蒙主義者」フロイトは、自ら創始した精神分析をもって、「科学」と「宗教」の相克にどう関わったか。


フロイトのモーセ  :  終わりのあるユダヤ教と終わりのないユダヤ教   

ヨセフ・ハイーム・イェルシャルミ/小森謙一郎

2014/09  岩波書店

定価:¥4,212(本体 ¥3,900)


◆選者による紹介コメント◆
『ユダヤ人の記憶・ユダヤ人の歴史』で知られる著名なユダヤ史家が、フロイトの『モーセと一神教』に、フロイト自身が受け継いだ宗教的伝統との対決の軌跡を読み取る。精神分析学は「神なきユダヤ人」による「神なきユダヤ教」か。


アーカイヴの病  :  フロイトの印象  --  新装版    (叢書・ウニベルシタス ) 

ジャック・デリダ/福本修

2017/01  法政大学出版局

定価:¥2,484(本体 ¥2,300)


◆選者による紹介コメント◆
デリダの講演録。イェルシャルミのフロイト論に対する反論。起源を求め構築しようとする誘惑(「アーカイヴの病=悪」)に抗い、資料にいかに接近するか。


フロイトと非-ヨーロッパ人  

エドワード・W.サイード/長原豊

2003/10  平凡社

定価:¥1,728(本体 ¥1,600)


◆選者による紹介コメント◆
イェルシャルミのフロイト論に対して、『モーセと一神教』を別様に読み直す。ユダヤ民族の起源に「エジプト人モーセ」を措定したフロイトの再構成に、西洋/非西洋の区別を越え出る、開かれたアイデンティティの可能性を見る。


トラウマ・歴史・物語  :  持ち主なき出来事   

キャシー・カルース/下河辺美知子

2005/02  みすず書房

定価:¥3,024(本体 ¥2,800)


◆選者による紹介コメント◆
フロイト『モーセと一神教』、デュラス/レネ『ヒロシマ私の恋人』、クライスト、ド=マン、ラカンなどの分析を通して、歴史のトラウマをいかに語るかを考察。



●「事実史」から「記憶史」へ

集合的記憶  

モリス・アルヴァックス/小関藤一郎

1989/10  行路社

定価:¥3,024(本体 ¥2,800)


◆選者による紹介コメント◆
アルヴァックス唯一の邦訳書。20世紀前半に社会構成主義的な記憶理論を提唱し、1980年代以降のノラ、アスマン夫妻らによる人文学の「記憶論的転回」を準備。


記憶の場  :  フランス国民意識の文化=社会史  第1巻  対立   

ピエール・ノラ/谷川稔/天野知恵子

2002/11  岩波書店

定価:¥7,128(本体 ¥6,600)


記憶の場  :  フランス国民意識の文化=社会史  第2巻  統合   

ピエール・ノラ/谷川稔/谷川稔

2003/01  岩波書店

定価:¥7,128(本体 ¥6,600)


記憶の場  :  フランス国民意識の文化=社会史  第3巻  模索   

ピエール・ノラ/谷川稔/谷川稔

2003/03  岩波書店

定価:¥7,128(本体 ¥6,600)


◆選者による紹介コメント◆
「フランス」を象徴する「記憶の場」の壮大な地勢図。さまざまなシンボルを介して、フランス人が自分たちの過去をどのように想像し、自己を定義してきたか。シンボル分析による想起の社会史。 記憶と歴史を架橋する。国民の記憶、民族の記憶、家族の記憶記憶はいかにして作られ語られてきたか。


定本想像の共同体  :  ナショナリズムの起源と流行    (社会科学の冒険 ) 

ベネディクト・アンダソン/白石隆

2009/11  書籍工房早山

定価:¥2,160(本体 ¥2,000)


◆選者による紹介コメント◆
ナショナリズム研究の古典。「ネイション」はシンボルに媒介され共有されたイメージであるという本書のテーゼは、ノラの「記憶の場」やアスマン夫妻の「文化的記憶」のコンセプトに通ずる。


創られた伝統   (文化人類学叢書 ) 

エリック・ホブズボーム/テレンス・レンジャー

1992/06  紀伊国屋書店

定価:¥5,137(本体 ¥4,757)


◆選者による紹介コメント◆
古来の「伝統」とされているものの多くは近代に創造された。「伝統」の発明の諸々の瞬間に迫る本書も、ナショナリズム研究の古典にして、記憶研究の嚆矢。


アビ・ヴァ-ルブルク記憶の迷宮 --  新装版   

田中純

2011/06  青土社

定価:¥3,888(本体 ¥3,600)


◆選者による紹介コメント◆
美術史家ヴァールブルクの図像学を鋭利な筆致で解説。トラウマ的なパトスを刻印され、集合的記憶の中に潜伏し、間歇的に回帰するイメージの伝承学は、アスマン夫妻の「文化的記憶」の源泉の一つ。


想起の空間  :  文化的記憶の形態と変遷   

アライダ・アスマン/安川晴基

2007/12  水声社

定価:¥6,480(本体 ¥6,000)


◆選者による紹介コメント◆
ヤン・アスマンとともに「文化的記憶」のコンセプトを提唱し、人文学の新たなパラダイムを打ち立てた著者が、古代の記憶術から現代のインターネットまでたどる、西洋における想起のメディア文化史。



●一神教の歴史の読み直し、一神教と暴力

パウロの政治神学  

ヤーコプ・タウベス/高橋哲哉

2010/08  岩波書店

定価:¥4,644(本体 ¥4,300)


◆選者による紹介コメント◆
ローマ書の読解によって、パウロの政治神学を、ユダヤ的なるものの系譜に位置づけ直す。


一神教の起源  :  旧約聖書の「神」はどこから来たのか    (筑摩選書 ) 

山我哲雄

2013/08  筑摩書房

定価:¥1,944(本体 ¥1,800)


◆選者による紹介コメント◆
古代オリエントの小国イスラエルで、ヤハウェのみを崇拝する唯一神観がいかに成立したか。


仮想戦争  :  イスラーム・イスラエル・アメリカの原理主義   

レザー・アスラン/白須英子

2010/07  藤原書店

定価:¥3,240(本体 ¥3,000)


◆選者による紹介コメント◆
己が体現する正義への絶対的な帰依、他者との非妥協、敵の排除。本書が分析する今日の原理主義と新たな「宗教戦争」の問題は、一神教に内在する暴力性を説く『エジプトモーセ』の中心テーマでもある。



●西洋の人文学が様々に紡いだ西洋のアイデンティティをめぐる言説の歴史

黒いアテナ  :  古典文明のアフロ・アジア的ルーツ  2 〔上巻〕  考古学と文書にみる証拠  上巻   

マーティン・バナール/金井和子

2004/06  藤原書店

定価:¥5,184(本体 ¥4,800)


黒いアテナ  :  古典文明のアフロ・アジア的ルーツ  2 〔下巻〕  考古学と文書にみる証拠  下巻   

マーティン・バナール/金井和子

2005/11  藤原書店

定価:¥6,048(本体 ¥5,600)


◆選者による紹介コメント◆
古代ギリシアの「アーリア起源」が18・19世紀のヨーロッパ中心主義による構築であることを明らかにし、ギリシア文明の「フェニキア・エジプト起源」を説く。西洋の自己理解を揺さぶる大著。J・アスマンは『エジプト人モーセ』で「記憶史」の観点からバナールの説を批判的に検討。


ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統  

フランセス・アミーリア・イェーツ/前野佳彦

2010/05  工作舎

定価:¥10,800(本体 ¥10,000)


◆選者による紹介コメント◆
イエイツの代表作の一つ。古代から中世を経てルネサンスに受け継がれた、新プラトン主義、グノーシス主義、ヘルメス主義の伝統を究明。J・アスマン『エジプト人モーセ』の重要な典拠の一つ。


エデンの園の言語  :  アーリア人とセム人:摂理のカップル    (叢書・ウニベルシタス ) 

モリス・オランデール/浜崎設夫

1995/03  法政大学出版局

定価:¥3,672(本体 ¥3,400)


◆選者による紹介コメント◆
18、19世紀のアーリア・セム人論を検証し、キリスト教ヨーロッパの民族主義と反ユダヤ主義を分析。西洋の人文学は、自文化の起源をいかに想起(=想像/創造)し、忘却してきたか。この問いに『エジプト人モーセ』も答える。


テクストの擁護者たち  :  近代ヨーロッパにおける人文学の誕生    (bibliotheca hermetica叢書 ) 

アンソニー・グラフトン/ヒロ・ヒライ

2015/08  勁草書房

定価:¥8,100(本体 ¥7,500)


◆選者による紹介コメント◆
ルネサンス以降の古典学、聖書学、年代学、普遍史の展開をたどり、人文学の誕生の歴史を解明。17世紀のモーセ論争の背景にあるエピステモロジー的転回を知るうえで重要な本。


世界の読解可能性   (叢書・ウニベルシタス ) 

ハンス・ブルーメンベルク/山本尤

2005/11  法政大学出版局

定価:¥5,940(本体 ¥5,500)


◆選者による紹介コメント◆
世界を神の著わした「書物」と見なし、人々はその謎をいかに読み解こうとしてきたか。その試みの歴史を古代から現代までたどる。『エジプト人モーセ』に描かれるヒエログリフ論争もこの歴史に加えられる。