内容紹介
【第164回 直木賞受賞作】「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張方をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。ほか全六話。生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。
目 次
心淋し川
閨仏
はじめましょ
冬虫夏草
明けぬ里
灰の男
著者紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2012年『涅槃の雪』で中山義秀文学賞、2015年『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞を受賞。時代小説から現代小説まで幅広く手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)